朔日(第二版)

第二夜

 幾日も大雪が降り続き、漸く上がったと思うともう辺りが真白になっていた。
 学校から家へ帰る途すがら、雪の凍ってつるつるになった所が面白いので辷ったり止まったりを繰り返しながら歩いていた。学生服の上に分厚い外套をひっかぶっているが、そんなものはお構いなしに鋭い空気が私の身体を冷たくする。西日が向こうの山の尾根に重なりあちこちに紫色の影を作っていた。
 往来から裏道へ入って行く折にちいさい踏切を跨ぐのだが、その踏切の辺りが何やら混雑している。近くまで行くと大勢の警官が集まってブルーシートを広げ、踏切が見えないようにしているらしかった。私はそこいらの警官のひとりに向かって、
「何かあったんですか」
 警官は何でもない顔をして振り返ると、
「事故だよ。悪いけど、ここは通れないから迂回して」
「人身事故ですか」
「忙しいから、悪いんだけど」
 それきり仕様がないので真白の往来を歩き直している。暫くすると土手へ上がる小径があったので入って見ると、そこから細い筋が続いていた。両脇に木立が鬱蒼として、歩き出すと木々の隙間から川が見えたが、波の調子がおかしな感じがして、どちらを向いて流れているのか解らない。
 気がつくと私の前をカラスが一羽歩いている。細い脚をぴょこぴょこと跛を引く様にしてこちらの歩幅に合わせるので、一本道なのに道案内でもする気か知らと思った。よく解らないが、嘴に何かの切れ端を咥えているらしかった。
 そうする内にとうとう日が暮れて、たちまち夜気が降って来るのが感じられ出した。辺りは真暗になってしまったが、道の筋や木立の梢、カラスの羽根が微かな明かりを帯びて浮かんでいる。今歩いている道はどこへ繋がっているのだろうかと、頭で考えては見るけれど、本当はその様な事なぞどうでも良かったのだろうと思う。