お墓参り

〈改訂があります こちらをおすすめします〉

 足が悪くなって動かれない祖母の代わりに、お寺へお墓参りに行った。
 辺りを掃除して、何の気無しに掌で墓石の頭をぺんぺんと叩いてみると、子どもに脛を蹴られた。吃驚して、「なんな、お前、どこの子」と訊くと、今度は砂を掛けられた。
 住職の奥さんが出て来て、子どもの首根を掴むと、軽々と持ち上げて奥へ戻って行った。
 納骨堂で線香を上げていると、さっきの子どもが来て、「なんな、お前、どこの子」と言った。すると同じ様な子どもが五六人来て、こちらの顔をじっと見ている。
「小浜のイトエんとこの子だよ」と応えると、
「テル美は」
「テル美は足が悪いから来られん」
「来られんのか」
「うん」
「なら、食っちまおうか」
 子どもらの口が大きく開いて、耳の辺りまで裂けた。中には小さく尖った歯が整然と並んでいる。
 食われたくは無いし、恐いから、「食っちまうって、お前ら、しばくぞ」と威圧を試みるが、子どもらは長い舌を出して唇を舐め始めた。顎を動かして歯を鳴らすのも居る。
「墓場で三回転ぶと」
 子どもらの内の一人が言った。
「むじなに取られて、海驢の番」
 そうしてげたげたと笑った。
 意味は分からないが、何だか馬鹿にされている様な気がしたから、本当にしばいてやろうかと思っていると、「まあ、まあ。あんた達、まだ居たの」と住職の奥さんが来て、持っていた箒で払うと、子どもらはどこかへ散って行った。奥さんは息をつき、こちらを向いて、
「どちら様だったか知ら」
「小浜のイトエんとこの孫です」
「まあ、まあ。大きくなって。えらいねえ、お婆ちゃんはお元気?」
「ちょっと今、足悪くしてて」
「まあ、そうなの。ちゃんと孝行して、えらいねえ」
「さっきのあの子らは、どこの子なんですか」
「あれはねえ、気にしなくていいからね。私もよく分からないんだけど、多分、山から来るんじゃないか知ら」
 お寺を出ると、風が吹いて山の木が鳴った。高い所から段々とこちらへ流れて来て、少しずつ辺りが呑まれる様であった。
 家に帰るなり、「あんた、ご先祖様に粗相したね」と祖母に膝をぴしゃりと叩かれた。(了)